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キモノ業界は月を追うごとに市場規模が縮小しているような気配が有り、産地での転廃業が予想以上のスピードで進行中です。 もともと作り手が高齢化しているだけに、スーパーのバイト行くよりも収入が無いような状況では致し方ありません。 ものづくりの意欲が減退し、帯やきものの生産は減る一方ですから、職人さんだけでなく、周りにいる多くの人が、和装業界では食べられなくなっているのです。 ところで我々本物志向のキモノ作りをしている者にとって無くてはならないのは、良質な白生地です。 しかしその白生地を織るためには、上質の糸が必要です。 蚕が吐いた糸でできた繭から糸を引き、それを製織のための糸作りをするのが製糸業ですが、現在日本の絹糸の製糸業者は、山形県に1社、群馬県に1社のたった2社しかありません。 そもそも養蚕は中国で紀元前3000年ごろから行われていたそうで、日本にも弥生時代頃にその技術が伝わったそうです。ただいくら作ってもその品質は中国製の足元にも及ばず、中国の絹は長い間高級品として珍重されていました。 日本の養蚕業が本当に盛んになったのは、江戸時代からで、改良を重ね、幕末の頃には中国のものに勝るとも劣らない品質の物が出来るようになりました。 明治以降は国策で生産が強化され、以降昭和初期までお茶と共に日本の重要輸出品でした。 昭和初期の養蚕農家は全国で220万軒あったそうです。今はなんと1100軒ほどです。 しかも従事している人の平均年齢は70歳です。 当然生産量も激減などという生易しいものではありません。 オイルショック以降、物の値が上がり、またきものの消費も落ちてきて、安い輸入のものが自然に増えて行きました。 現在生産されている白生地のほとんどは中国やブラジルから輸入された生糸で織られています。特にブラジルのブラタク社のものが最も品質が良く安定しているそうです。 私の作品でもフォーマルの重いものはすべてこの糸を使って織られています。 なぜここの糸が良いかというと、養蚕から製糸まで一貫して生産しているので、品質管理が行き届いていると言うことだそうです。 中国の場合は、あちこちから繭を買って紡いだ糸で製糸するので、品質にばらつきが有るそうで、染めてみるとムラになったりするので、当社では扱っていません。 それでも今では中国では製織から染色までなされており、生地としての輸入も相当あります。 中国のものが増えていった中で、国内の養蚕はどうなったかと言うと、消費量が減るとともにどんどん生産が落ちていきました。これは一つには中国との価格差があるというので、当時の農林省が取った手が、輸入生糸に、価格調整金と言う名目で金を取りそれを財源に、国内養蚕農家にキロ当たりいくらと言う補助金を出していたのです。 なにせ群馬県や隣の栃木県には偉い代議士先生が数多くおられるので、つまり保護行政に走ったのです。 米作りでもそうですが、結局そのことが益々競争力を失わせる結果となり、農業の衰退とともに半農で生産していた農家も減り続け、かつ品質も落ちていきました。 今では経糸には国産品は使えないと言われる様な事態です。 農水省の保護行政は他の部門でも結果的に国際競争力を失い、益々生産が減ると言う本来の目的とは違う結果を生んでしまいました。 食糧自給率が39%しかないということも、無能の農水行政の結果です。 価格が高くても、本当に良いものならそれはそれで需要があるはずだと思われますが、単に補助金を与えると言うことでは衰退してしまいます。 その結果日本の農業は惨憺たることになっているような気がしますが、このまま放っておいたら、本当に国産養蚕はゼロになってしまいますので、数年前から群馬県では独自の取り組みで、本当に細い糸を吐く、蚕の品種改良に努め、その糸で製織した白生地の販売までの立てに繋ぐ協同組合を立ち上げています。 世紀21とか新小石丸というのがその品種です。 小石丸という日本原産種の中で最も細い糸を吐く蚕は現在宮中の中で役人の手で育てられ、白生地まで織られています。私共が内親王のおキモノをお作りさせていただいたときには、この生地を頂きました。 大変手触りや発色のいい本当に高品質の生地でした。 それに近い品種の新小石丸で生産された生地も勝るとも劣らないものですし、確かに普通の白生地よりは高価ですが、色無地などにしてみるとその良さが分かります。 私もこういうものづくりに共感し銀座の店では扱っております。 しかしそれでも全体の養蚕農家はまだ減り続けており、ついに農水省もいままでの輸入品からの価格調整金を取って補助すると言う仕組みを止める事にし、この4月にその法律を廃止しました。 今後3年間の間は、国産繭を使って製品まで作ると言うような動きに補助金を出すそうで、そうしたこともあってここの所そういう製品作りが話題になっているのです。 ただ3年たったら、その補助金は無くなり、輸入生糸との価格差はざっと3倍となるようです。今回の補助金はいわば手切れ金で、それもたった35億円です。 この補助金を出すところが大日本蚕糸会と言う典型的な農水省の外郭団体というか天下り先です。 ですから補助金は切れたあとも作り続けるためには、高品質化しかないと思われますし。養蚕農家が食べていけるだけの収入のことも含め、なかなかに前途は険しく、業界の見識と努力にかかっています。 少量でも、輸入品よりは圧倒的な品質差のあるものづくりが出来るのか、そしてその付加価値で消費されるのか、そのシステム作りがこの3年で構築できるのか、これには生産から流通までの業者が、一致団結して国産繭の生産を守ろうと言う認識を共有出来なければ、結局補助金が出なくなって終わってしまうと言うことも考えられますし、 真剣に業界として取り組む必要性を私は感じるのですが、今のところはどうも大きな動きとしてはなっていません。 これは、自分さえ良ければ良いという業者が多すぎて、先行して単独で動いてしまっているからでしょう。 単独で受けるといずれその生産を担保できずに値を上げることとなりかねないのですがね。 新小石丸の生地は銀座にいつでもおいておりますので、一度その手触りをお確かめください。 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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全国に42あった染織試験場が廃止され、つくばに統合され、そこに国産蚕(百何種類か)も集められていますね。 |
七兵衛 2008/06/16 18:02 |
私も糸・白生地にはかなり危機感を持っています。 |
もずや 2008/06/16 19:36 |
七兵衛様 |
銀座泰三 2008/06/16 20:05 |
天蚕を養蚕(って言い方も変ですが)する農家も廃業し |
さくらこ 2008/06/17 13:17 |
おっしゃる通りなのですが、ことここにいたっては、国産繭の増産は至難の業でしょう。結局国の補助金行政が、競争力を失わせる結果となってしまい、品質まで下がってしまったのです。 |
銀座泰三 2008/06/17 17:34 |
天然繊維というのは、羊毛、綿、絹、どれをとっても基本的には農産物だと思うんです。だから、収穫量、作柄によって値段が違うのは当然なんです。その価格差を吸収すべき任務にあるのが流通業者なんではないでしょうか。もちろん、吸収しきれずに消費者価格に転嫁する場合もあるでしょうが、作柄の善し悪しによって、差が出ないように見通しを立てて安定的な価格設定をすることが必要なんだと思います。一次産品においてはそういう作業は商社の常識だと思いますが。 |
もずや 2008/06/17 20:43 |
もずやさんの言うのは正に正論です。 |
銀座泰三 2008/06/17 21:07 |
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